大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)728 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人沢田剛及同高橋己之助同沢田剛両名の各上告趣意は末尾添附別紙記載の通

りでありこれに対する当裁判所の判断は次の如くである。

弁護人沢田剛の上告趣意第一点に付て。

刑の量定は当該被告人に付て各般の事情を勘酌して具体的に妥当とされる処に従

うのである。従つて量刑は個別化されなければならない。他の被告人との比較にお

いて為さるべきものではない。それ故本刑の量刑が所論の淵武事件に比して重いと

しても只そのことの為めに本件の判決が公平のものでないと断ずることは出来ない。

それ故所論の如き不公平を認むべき何等の資料もない。尚憲法第三七条にいわゆる

公平なる裁判所の裁判とは組織構成等において偏頗の虞なき裁判所の裁判をいうも

のであること当裁判所大法廷の判例とする処である(昭和二二年(れ)第四八号事

件同二三年五月二六日言渡判決)原裁判所が組織構成等において偏頗の虞ある裁判

所であることはこれを認むべき資料は何もない。論旨は理由がない。

同第二点に付て。

進駐軍物資であつた物でも払下品ならばこれを所持しても罰せられないことはい

う迄もないことである、原審が「被告人は法定及公に認められた場合でなくして」

と判示し尚「連合国占領軍の財産である寝袋六枚」と判示して居る処から見れば右

寝袋は払下品でないものと認定したことは疑ない。記録を精査しても右物資が払下

品であると認むべき資料は少しもない。当弁論を再開するか否か及証拠調の限度を

定めることは法に特に定められた場合の外原審の専権に属する処である、それ故論

旨は理由がない。

弁護人高橋己之助同沢田剛両名提出の上告趣意に付て。

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原審の公判調書に所論の如く記載されてあることは事実である。その記載によれ

ば弁護人が最終に弁論をしたことがわかる、刑事訴訟法第三四九条第三項には「被

告人又は弁護人には最終に陳述する機会を与うべし」とあるだけだから既に弁護人

が最終に弁論した事実ある以上この規定の要求は満たされているといわなければな

らない。更にその上被告人に最終の陳述をさせなかつたとしてもこれを以て違法と

することは出来ない、原判決には所論の様な違法はないので論旨は理由がない。

尚弁護人沢田剛の上告趣意第一点には「憲法第三八条第一項によれば何人も自己

に不利益な供述を強要されないと規定され」云々の字句がありこれ丈を見ると一見

同条違反を主張するものであるかの様にも見えるが、被告人が強要されて自己に不

利益な陳述をしたとの事実は少しも主張されて居ない。それ故裁判所法第一〇条第

一号にいう「当事者の主張に基いて法律命令規則又は処分が憲法に適合するか否か

を判断するとき」には該当しないので当小法廷において審理判決した。

検察官 宮本増蔵関与

昭和二三年一一月三〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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